漢字七不思議

<漢字七不思議 其ノ肆>

「当て字の創造主」


また会いましたね。






あっ、ちょっと待って。(カタカタカタ・・・)






(カチッ・・・)











また会いましたね。






三度に飽き足らずまだ求めるか・・・






尚も進みたいか・・・






先の見えない霧の道






ふふふ・・・
















このくだり要る?
















今日は「当て字」について話そうではないか。






例えば「独逸(ドイツ)」「紅葉(もみじ)」

などがそうだ。






そして当て字は日常にも潜んでいる。






その証拠に、私はすでに「今日(きょう)」という

当て字を使ったが、

貴方は無意識に読むことができただろう。






そして時に、

こんなことをふと思ったりしなかっただろうか。











「誰が当て字を決めているんだ?」











当然、その問いには一概に答えることはできない。






しかし、一つの答えとして

「小説家」というのは有りではなかろうか。






かつて、夏目漱石や森鴎外は

著書に「自作の当て字」を用いたのは有名だろう。






そのなかでも、「沢山」「浪漫」

今や日常的な熟語として浸透している。






辞典にも当たり前のように載っているし、

それを裏付けるほどの「知名度」も獲得している。






過去の小説家が今の日本の漢字文化に

与えた影響は計り知れない。











だが、考えてみて欲しい。











彼らの作った当て字は

知名度が高くなったから辞典にも載った。






では、こんな当て字はどうだろう。






「羽毛頚巻(ボア)」「愁夜曲(ノクチュルノ)」

もれっきとした当て字だ。

実際にとある小説で使われた。

※「東京景物詩及其他」- 著:北原白秋



だが、この2つを載せている辞典はほとんどない。






なぜなら、知名度が低いからだ。
















知名度の高い低いの基準とは何だ











もう見えてきただろう・・・






決して晴れることのない霧の塊が。



















辞典に載るための条件として

「定着しているかどうか」は重要な要素である。






しかし、何をもって定着している

判断するかは辞典の編集者次第である。






さらに厄介なことに、同じ漢字で違う読みが

当てられているもの
だってある。






例えば「火酒」

出典:ふりがな文庫 - https://furigana.info/w/%E7%81%AB%E9%85%92











どれだよ(怒)






おっと失礼、素が出てしまった。
















補足しておくが、上記のデータは

「どれだけ小説に使われたか」の割合であって、

知名度の度合いを示すデータではない。






つまり、上記の内どの読みを辞典に載せるかは

編集者の判断にゆだねられる。






そう、明確な基準などない。











全ての漢字に「絶対的に正しい読み」などないのだ。






"全て"は言い過ぎでは」と

思われたかもしれないが、

こういう話もある。



・もともとこの言葉は「新しい」と書いて「あらたしい」と読みました。 しかし江戸時代に流行った逆さ言葉の中で「あらたしい」を粋がった人々は「あたらしい」と読んでいたのが、いつの間にかこっちで定着してしまったのです。

出典:知泉Wiki - 「新しい」


「寄贈(正:きそう 誤:きぞう)」については若手アナウンサーにどう読むか聞いたら、ほとんどが「きぞう」と濁って読むと答えました。
「依存(正:いそん 誤:いぞん)」と「有り得る(正:ありうる 誤:ありえる)」はそれぞれ半々に分かれました。
荒げるについては本来の「あららげる」と読む人はゼロでした。
荒げるの読みは完全に「あらげる」で定着していて、放送でも「あらげる」と読むのはOKにしています。

出典:日本語研究室 - 「雰囲気」は「ふイんき」!?~慣用読みの今~






元々あった漢字の"正しい"読みも、

"間違った"読みが定着してしまった場合、

そっちが"正しい"ことになってしまうのだ。






これは全ての漢字に言えることである。






現に、「寄贈(きそう)」や「依存(いそん)」は今まさに

"正""誤"の間をさまよっている。











読みとは曖昧なのである。






そして、認知度こそが判断基準なのだ。






こと当て字に関しては、特にその傾向が強い。






もともと読みが無い漢字に読みを当てているのだから。






すべての当て字はこれからも彷徨うのだ・・・






永遠に・・・





















さて、今日はここまでにしよう。






これ以上進むと、戻れなくなるぞ。






もう元の世界にはね・・・






ふふふ・・・





















(この話し方しんどい・・・)